冷凍食品、今どこまで生に近づいた?

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昔は、「冷凍=ちょっと味が落ちるもの」というイメージがありました。解凍したら水っぽくなっていたり、肉がパサついていたり。そういう経験がある人も多いと思います。

でも最近、冷凍食品を食べて「あれ、普通にうまいな」と思うこと、増えていませんか。コンビニの冷凍パスタも、スーパーの冷凍餃子も、ひと昔前とは別物になっています。

「冷凍技術が進化したらしい」ということは、なんとなくみんな知っています。今回の記事で考えたいのは、その先です。

結局、今の冷凍は生と比べてどこまで来ているのか。

先に結論を言ってしまうと、答えは「食品による」としか言えません。

ただし、この「食品による」の中身を具体的に知っておくと、これからの買い物や保存の仕方がかなり変わってきます。今日はそこを、一つひとつ丁寧に見ていきます。

なお、この記事は「冷凍はすごい、生はもう古い」という話ではありません。

逆に、「やっぱり生が一番」という結論ありきの話でもありません。

食品ごと、条件ごとに、実際のところを整理していきます。

そもそも、なぜ冷凍すると味が落ちるの?

まず、「冷凍すると解凍後にイマイチになる」理由から押さえておきましょう。

食品にはたくさんの水分が含まれています。この水分は、冷凍すると氷の結晶になります。

問題は、この氷の結晶が大きく育ってしまう場合です。

農林水産省の説明によると、食品はおおむね−1℃付近から凍り始め、−5℃付近でほぼ凍結します。

この−1℃から−5℃あたりは、氷の結晶が大きくなりやすい温度帯で、「最大氷結晶生成帯」と呼ばれています。

この温度帯をゆっくり通過する「緩慢凍結」では、氷の結晶が大きくなりやすく、食品の細胞や組織が損傷しやすくなります。

組織が傷つくと、解凍したときに水分が外へ流れ出ます。

これが、肉や魚を解凍したときによく見る「ドリップ」です。

ドリップが多く出ると、水分だけでなく、うまみ成分なども一緒に失われやすくなります。

その結果、

  • 水っぽくなる
  • パサつく
  • 食感が変わる
  • 風味が落ちる

といった品質低下につながります。

つまり、「冷凍すると味が落ちる」というイメージには、きちんと技術的な理由があるわけです。

今の冷凍は何が変わった?

では、最近の冷凍食品は何が変わったのでしょうか。

キーワードは「急速凍結」です。

先ほどの「最大氷結晶生成帯」をできるだけ短い時間で通過させれば、氷の結晶が大きく育つのを抑えることができます。

農林水産省では、急速凍結について、この温度帯をおおむね30分以内で通過させる考え方を紹介しています。

氷の結晶が小さいまま凍れば、食品組織へのダメージを抑えやすくなります。

その結果、解凍時のドリップが減り、食感や風味を保ちやすくなる、という仕組みです。

市販の冷凍食品では、−30℃から−40℃程度の低温で急速凍結する方法が一般的に使われています。

一方、一般的な家庭用冷凍室は−18℃程度です。

家庭用冷凍庫に食品を入れて新たに凍らせる場合、業務用の急速凍結より時間がかかり、緩慢凍結になりやすくなります。

ただし、ここで一つ大事なことがあります。

急速冷凍すれば、生と完全に同じになるわけではありません。

急速凍結はあくまで、食品組織へのダメージを抑えやすくする技術です。

最終的な品質は、

  • 冷凍する前の鮮度
  • 凍らせる速さ
  • 保存温度
  • 保存期間
  • 解凍方法

など、いくつもの要素で決まります。

つまり、冷凍技術が進化したからといって、「冷凍なら何でもおいしい」という話ではないのです。

魚はもう生と区別できない?

「冷凍すると味が落ちる」というイメージが特に強いのが、刺身などの魚介類ではないでしょうか。

その代表例として分かりやすいのが、マグロです。

水産庁によると、遠洋で漁獲されるマグロ類は、長期間の保管に耐えられるよう、一般に−60℃程度の超低温で冷凍・保管されています。

つまり、私たちが「おいしい」と感じて食べているマグロの中にも、冷凍を経て流通しているものがあります。

「生=上、冷凍=下」と単純には分けられないわけです。

そして魚の場合、冷凍後の品質を大きく左右するのが解凍方法です。

日本冷凍食品協会も、

  • 低温解凍
  • 自然解凍
  • 水中解凍
  • 氷水解凍

など、複数の方法を紹介しています。

どの方法が向いているかは食品によって異なります。

食品に合った解凍方法を選ぶことは、ドリップなどの品質低下をできるだけ抑えるうえで重要です。

「冷凍」と聞いただけで評価が下がった?

ここで、今回の記事でも特に面白い研究を紹介します。

2020年、International Journal of Refrigerationに掲載された研究では、サンマの刺身を使った食べ比べが行われました。

参加したのは103人。

非冷凍のサンマと、−35℃で冷凍したあと氷水で解凍したサンマを比較しました。

まず、「どちらが冷凍か」を知らせずに食べてもらったところ、平均的な好みに有意な差はありませんでした。

ところが、

「こちらは冷凍です」
「こちらは非冷凍です」

と情報を知らせた状態で評価してもらうと、冷凍品の評価が大きく下がったと報告されています。

これはかなり興味深い結果です。

少なくとも、この実験条件では、実際の味の差だけではなく、「冷凍である」という情報そのものが評価に影響した可能性があります。

もちろん、この研究だけで、

「人は冷凍と聞くと必ずまずく感じる」

とは言えません。

また、

「すべての冷凍刺身は生と同じ」

という意味でもありません。

あくまで、サンマを使った特定の条件での結果です。

それでも、「冷凍=味が落ちる」というイメージが、私たちの評価そのものに影響する可能性があるという点は、かなり面白いところです。

肉は冷凍するとやっぱり味が落ちる?

肉でも基本的な仕組みは魚と同じです。

冷凍・解凍によって食品組織が傷つくと、ドリップが出やすくなります。

その結果、水分やうまみが失われ、パサつきや硬さにつながることがあります。

特に肉では、「保水性」と呼ばれる、水分を肉の中に保つ力が品質に大きく関係します。

一方、急速凍結を使えば、こうしたダメージを抑えやすくなります。

ただし、肉は種類や部位によってもかなり違います。

牛肉、豚肉、鶏肉では性質が違いますし、赤身と脂身でも冷凍の影響は同じではありません。

脂質は保存中に酸化する可能性があるため、長期保存すれば風味が低下することもあります。

家庭で冷凍する場合は、

  • 薄くする
  • 小分けにする
  • 空気をできるだけ抜く
  • 早く凍らせる

といった工夫が重要です。

厚い塊のまま凍らせるより、薄く平らにして冷凍したほうが、中心まで早く凍らせやすくなります。

ただし、ここでも、

「肉は冷凍したほうがおいしい」

とは言えません。

言えるのは、

適切な凍結・保存・解凍によって、冷凍による品質低下をかなり抑えられるようになっている

ということです。

野菜・果物は?栄養まで落ちる?

野菜と果物については、味だけでなく「栄養」も気になります。

ここでポイントになるのが、市販の冷凍野菜です。

市販の冷凍野菜の多くは、急速凍結する前に「ブランチング」と呼ばれる短時間の加熱処理を行います。

これは酵素の働きを抑え、保存中の変質や変色などを防ぐためです。

では、冷凍すると栄養はどうなるのでしょうか。

2015年にJournal of Agricultural and Food Chemistryに掲載された研究では、

  • トウモロコシ
  • ニンジン
  • ブロッコリー
  • ホウレンソウ
  • エンドウ
  • インゲン
  • イチゴ
  • ブルーベリー

の8品目について、冷蔵保存された生鮮品と冷凍品を比較しています。

結果を整理すると、

  • ビタミンCは8品目中5品目で有意差なし
  • 残り3品目では冷凍品のほうが高かった
  • αトコフェロール(ビタミンEの一種)は、一部の品目で冷凍品のほうが高かった
  • βカロテンは、一部の品目で冷凍品のほうが低かった
  • ミネラル、食物繊維、総フェノールは、多くの品目で大きな差がみられなかった

という結果でした。

ここから分かるのは、

「冷凍すると栄養がなくなる」というわけではない

ということです。

生鮮品と同程度に保たれる栄養素も多く、食品や栄養素によっては冷凍品のほうが高かったケースもあります。

一方で、冷凍前の加熱処理などによって低下する栄養素もあります。

つまり、

「冷凍野菜のほうが栄養価が高い」

とも、

「冷凍野菜は栄養が少ない」

とも、一律には言えません。

食品と栄養素によって違う、というのが実際のところです。

ご飯やパンはむしろ冷凍向き?

ここまでは「冷凍が生にどこまで近づいたか」という話でした。

でも、ご飯は少し事情が違います。

ご飯の場合、保存方法として冷凍のほうが有利なことがあります。

炊きたてのご飯がおいしいのは、米のでんぷんが水分を含んでふっくらした状態になっているからです。

これを「糊化(こか)」といいます。

時間が経つと、でんぷんは再び硬い状態に戻ろうとします。

これが「でんぷんの老化」です。

農林水産省も、米飯のでんぷんは保存中に老化し、冷蔵するとその老化が進みやすいこと、急速冷凍すると老化を抑えられることを説明しています。

つまり、余ったご飯を冷蔵庫に入れるよりも、早めに冷凍したほうが、炊きたてに近い食感を保ちやすいのです。

ラップなどで包み、できるだけ早く冷凍し、食べるときに電子レンジなどで一気に温める。

「ご飯は冷蔵より冷凍」と言われるのは、単なる感覚ではなく、でんぷんの性質から見ても理にかなっています。

パンも似ています。

パンも時間とともにでんぷんの老化が進み、硬くパサついていきます。

種類にもよりますが、購入後早めに冷凍することで、常温や冷蔵より食感の劣化を抑えやすいケースがあります。

もちろん、

「パンは全部冷凍すればいい」

という話ではありません。

水分量や材料、食べるまでの期間によって適した保存方法は変わります。

ただ、冷凍が「仕方なく使う保存方法」ではなく、品質を保つために積極的に選ばれる食品もあるということです。

市販の冷凍食品が家庭冷凍と違う理由

ここまで読んで、

「じゃあ家で何でも冷凍すれば、冷凍食品みたいにおいしくなるの?」

と思った人もいるかもしれません。

ここは大きな違いがあります。

市販の冷凍食品と、家庭で作った料理を冷凍することは同じではありません。

メーカーが作る冷凍食品は、そもそも企画段階から「冷凍すること」を前提に作られています。

たとえば、

  • 冷凍後も食感が変わりにくい原材料や配合
  • 急速凍結を前提とした調理工程
  • 業務用設備による急速凍結
  • 酸化や乾燥を抑える包装
  • 冷凍状態を維持するコールドチェーン
  • 家庭で加熱したときにおいしくなるよう設計された調理条件

などです。

つまり、市販の冷凍食品は、

「作って終わり」ではなく、「冷凍して、保存して、家庭で加熱して食べるところまで」が一つの商品設計

になっています。

近年の冷凍パスタや冷凍餃子がおいしくなった背景には、単純に冷凍機の性能が上がっただけではなく、こうした食品設計全体の進化もあります。

「冷凍が生を超える」は本当?

では、今回一番気になるところです。

冷凍は、生を超えたのでしょうか。

ここは、「超えた」と一言で言ってしまうのは正確ではありません。

生にも冷凍にも、それぞれ得意な条件があります。

ただし、

  • 収穫後早い段階で加工・急速凍結された野菜や果物
  • 鮮度の良い状態で凍結された魚介類
  • 冷蔵すると食感が落ちやすいご飯
  • 冷凍を前提に設計された調理済み食品

などでは、私たちが普段買う「生鮮品」と比べて、冷凍品のほうが良い状態で食べられるケースもあり得ます。

ここで重要なのは、

「生」と「冷凍」だけを比べても、実は十分ではない

ということです。

たとえば、

獲れたての魚をその場で食べる場合と、数日前に漁獲されて流通した魚を比べる場合では、「生」という言葉の意味が全く違います。

野菜でも同じです。

収穫してすぐ急速冷凍されたものと、収穫から数日経って店頭に並んだ生鮮品なら、単純に「生だから上」とは言えません。

つまり現在は、

「生か冷凍か」というラベルだけで優劣を決めること自体が難しくなっている

ということです。

食品 今の冷凍と生の関係
魚 鮮度の良い状態で急速凍結し、適切に解凍されたものでは、生との差がかなり縮まっているケースがある
肉 急速凍結と適切な保存・解凍で品質低下を抑えられるが、種類・部位による差もある
野菜・果物 栄養素によっては生鮮品と同程度、または冷凍品が上回るケースもある
ご飯・パン でんぷんの性質上、冷蔵より冷凍のほうが食感を保ちやすい場合がある
調理済み食品 冷凍・解凍を前提に商品設計されており、家庭での手作り冷凍とは単純比較できない

家庭で冷凍するときはここに注意

市販の冷凍食品が進化しているからといって、家庭でも同じ条件で冷凍できるわけではありません。

家庭用冷凍庫は、業務用の急速凍結設備ほど早く食品を凍らせることはできません。

それでも、ちょっとした工夫で品質低下を抑えることはできます。

できるだけ早く凍らせる

金属製のトレーなどに食品をのせて冷凍すると、熱が伝わりやすくなり、凍結時間を短くしやすくなります。

急速冷凍機能がある冷凍庫なら、それを利用するのも一つの方法です。

薄く、小分けにする

食品を厚い塊のまま冷凍すると、中心部まで凍るのに時間がかかります。

薄く平らにしたり、一回分ずつ小分けしたりすると、早く凍らせやすくなります。

空気をできるだけ遮断する

冷凍庫の中でも、乾燥や酸化は起こります。

ラップでぴったり包み、保存袋などに入れて空気をできるだけ抜いておくと、品質低下を抑えやすくなります。

家庭冷凍は早めに食べる

市販の冷凍食品は、メーカーが管理された条件で製造・保存され、長期保存を前提に作られています。

一方、家庭で冷凍した食品は条件が違います。

日本冷凍食品協会では、家庭で冷凍した食品について、2〜3週間程度を目安に使い切ることを勧めています。

「冷凍したから何か月でも大丈夫」と考えないことが大切です。

解凍方法は食品ごとに変える

解凍方法にも万能な正解はありません。

低温解凍、自然解凍、水中解凍、氷水解凍など、食品に合った方法があります。

市販の冷凍食品については、まず商品パッケージに書かれた解凍・加熱方法に従うのが基本です。

家庭で冷凍した肉や魚なども、それぞれに合った方法を選ぶようにしましょう。

まとめ|「生か冷凍か」だけでは決められない時代になった

「冷凍すると味が落ちる」というイメージには、技術的な理由があります。

緩慢凍結では氷結晶が大きくなり、食品の組織を傷つけ、解凍時のドリップなど品質低下につながりやすいためです。

一方、現在は急速凍結技術が進み、食品へのダメージをかなり抑えられるようになりました。

魚のように、条件次第では冷凍品と非冷凍品で好みに差が出なかった研究もあります。

野菜や果物でも、冷凍したからといって栄養がなくなるわけではなく、生鮮品と同程度に保たれている栄養素もあります。

ご飯のように、冷蔵より冷凍のほうが品質を保ちやすい食品もあります。

ただし、

「冷凍のほうが生よりおいしい」

と一括りにはできません。

冷凍食品のおいしさを決めるのは、

  • 冷凍前の鮮度
  • 凍結方法
  • 保存温度
  • 保存期間
  • 解凍方法

など、いくつもの条件です。

だから今は、

「生だから上、冷凍だから下」

という単純な考え方では、実際の食品の品質を説明しにくくなっています。

これからスーパーで食品を選ぶときは、

「生か冷凍か」

だけではなく、

「この食品にとって、どちらの保存方法が向いているのか」

という視点で見てみると、今までとは少し違った買い物ができるかもしれません。

参考にした主な情報源

  • 農林水産省「おいしさの秘密を探る!冷凍食品豆知識と製造工場レポート」
  • 農林水産省「冷凍食品・冷凍流通品分科会」資料
  • 水産庁「漁場環境をめぐる動き」
  • 一般社団法人 日本冷凍食品協会「よくあるご質問」
  • Bouzari A, Holstege D, Barrett DM. Vitamin retention in eight fruits and vegetables: a comparison of refrigerated and frozen storage. Journal of Agricultural and Food Chemistry. 2015.
  • Bouzari A, Holstege D, Barrett DM. Mineral, fiber, and total phenolic retention in eight fruits and vegetables: a comparison of refrigerated and frozen storage. Journal of Agricultural and Food Chemistry. 2015.
  • Watanabe M, Suzuki T, et al. Do consumers actually sense that sashimi made from frozen-thawed fish tastes worse than non-frozen one? International Journal of Refrigeration. 2020.

※本記事は、官公庁資料、業界団体の案内、査読付き学術論文をもとに構成しています。研究結果は対象となった食品や条件に限定されるものであり、すべての食品・冷凍方法にそのまま当てはまるものではありません。

もっと実用的に使いたい方へ
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