「家賃を払い続けるくらいなら、家を買った方がいい」
「これからは賃貸の方が気楽」
どちらもよく聞く話です。
でも、持ち家と賃貸は単純に「どちらが得か」だけでは比較できません。
同じ人でも、20代と50代では答えが変わるかもしれませんし、転勤の有無や子どもの人数、住みたい地域によっても変わります。
では、何を基準に考えればいいのでしょうか。
結論:持ち家と賃貸に「万人共通の正解」はない
先に結論です。
持ち家と賃貸のどちらか一方が、すべての人にとって優れているわけではありません。
大切なのは「どちらが一般的に得か」ではなく、
- 何年くらい、その地域に住む予定なのか
- 家族構成が今後どう変わりそうか
- 転勤や住み替えの可能性があるか
- 老後はどこで暮らしたいか
- 住宅の維持管理をどこまで自分で抱えたいか
- 住宅を所有することと、身軽に住み替えられることのどちらを重視するか
などを考えることです。
国土交通省も、持ち家には売却できる可能性がある一方、市場価格の下落や、売りたいときにすぐ売れないリスクがあると説明しています。一方、賃貸には状況の変化に合わせて柔軟に転居しやすいという特徴があります。
この記事では、それぞれのメリット・デメリットを整理しながら、最後に「自分の場合はどう考える?」まで見ていきます。
日本では持ち家と賃貸、どっちが多い?
まず、実際の日本の状況を見てみましょう。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で主世帯全体の持ち家割合は60.9%です。
つまり、およそ6割が持ち家です。
ただし、
「6割が持ち家だから、持ち家の方が正解」
という意味ではありません。
年齢や家族構成によっても状況は違います。
高齢者のいる世帯では持ち家が81.6%ですが、高齢単身世帯では67.5%が持ち家、32.2%が借家となっています。
これはあくまで現在の居住実態を表す統計です。
多数派を選ぶのではなく、自分の暮らしに合っているかを考えることが重要です。
1.持ち家のメリット
住宅ローンを完済すれば、毎月の返済がなくなる
住宅ローンを組んで家を購入した場合、完済すれば毎月のローン返済はなくなります。
そのため、老後の住居費の構造は賃貸とは大きく異なります。
ただし、
「住宅ローン完済=住居費ゼロ」ではありません。
固定資産税などの税金や、将来の修繕費は必要です。
マンションの場合は、住宅ローンを完済したあとも管理費や修繕積立金などが続きます。
土地・建物を自分の資産として所有できる
持ち家は、自分が所有する資産になります。
将来的に、
「売却する」
「家族に相続する」
「条件が合えば貸し出す」
といった選択肢も考えられます。
ただし、買った金額と同じ金額で売れるとは限りません。
国土交通省も、持ち家を資産として考える場合には、市場価格が下落するリスクや、売りたいときにすぐ売却できるとは限らない点に注意が必要としています。
リフォームなどの自由度が高い
自分の所有する住宅なので、賃貸と比べて住まいを変更する自由度が高くなります。
壁紙を変える、設備を交換する、間取りを変更するなど、家族や生活の変化に合わせて住まいを作っていくことができます。
※マンションでは管理規約や共用部分との関係などから制限を受ける場合があります。
老後の住まいを確保しやすい
住宅ローンを現役時代に完済できれば、老後は毎月のローン返済がない状態で暮らすことができます。
これは老後の生活設計を考えるうえで、一つの特徴です。
一方で、築年数が進めば修繕が必要になる可能性も高まります。
「老後は家賃がないから安心」と考えるだけでなく、修繕費なども含めて準備する必要があります。
家族へ相続できる
住宅や土地を家族に相続することもできます。
ただし、相続した家族がその家に住むとは限りません。
売却や管理、相続手続きが必要になる場合もあります。
そのため、
「家を残せば必ず家族のためになる」
とも限りません。
2.持ち家のデメリット
持ち家には、次のような負担やリスクもあります。
- 購入時に諸費用など、まとまったお金が必要になる
- 住宅ローンを利用すれば、長期間返済することになる
- 購入後も固定資産税などが発生する
- 戸建てでは外壁・屋根・給湯器などの修繕費を準備する必要がある
- マンションでは管理費・修繕積立金などが必要
- 転勤や離婚、家族構成の変化があっても簡単には住み替えにくい
- 購入した住宅の市場価格が下落する可能性がある
- 売りたいときに希望価格ですぐ売れるとは限らない
- 立地によっては災害リスクも考える必要がある
「住宅ローンを払えるか」だけでなく、購入後にかかるお金や将来の住み替えまで含めて考えることが重要です。
3.賃貸のメリット
生活の変化に合わせて住み替えやすい
賃貸の大きな特徴が、住み替えやすさです。
転勤、転職、結婚、離婚、子どもの誕生や独立など、人生では住まいに求めるものが変わります。
その時々の状況に合わせて住む場所を変えられるのは、賃貸ならではのメリットです。
家族の人数に合わせて広さを変えやすい
子どもが増えたら広い住宅へ。
子どもが独立したらコンパクトな住宅へ。
家族構成に合わせて住む家を変更しやすいのも特徴です。
住宅ローンを抱えない
住宅を購入しないため、数十年単位の住宅ローンを組む必要はありません。
転職や働き方の変更など、将来の収入が変化したときにも、住居を変更することで住宅費を調整できる可能性があります。
住むために必要な修繕は、原則として貸主側が行う
民法606条では、賃貸人は賃貸物を使用するために必要な修繕をする義務を負うことが定められています。
ただし、借主側の責任によって修繕が必要になった場合は別です。
そのため、持ち家のように自分の住宅資産として外壁や屋根などの修繕計画を立てて費用を準備する必要は基本的にありません。
立地を優先できる場合がある
購入するには予算的に難しい地域でも、賃貸なら住めるケースがあります。
「職場の近くに住みたい」
「子育て中だけ広い家に住みたい」
「一度この街に住んでみたい」
など、今の生活を優先して住まいを選びやすいのも特徴です。
災害や周辺環境の変化に対応しやすい
周辺環境が大きく変わった場合なども、契約条件を確認したうえで別の住宅へ移るという選択肢があります。
持ち家の場合は住宅そのものを所有しているため、同じようにはいきません。
4.賃貸のデメリット
一方で、賃貸にもデメリットがあります。
- 住み続ける限り、基本的に家賃が発生する
- 家賃を払っても、その住宅自体を所有することにはならない
- 共益費や管理費、保険料など家賃以外の費用が発生する場合がある
- 地域や契約によっては更新料が必要になる
- リフォームや設備変更の自由度が低い
- ペット、楽器、DIYなどに制限がある物件もある
- 老後も賃貸で暮らす場合は、将来の家賃負担や住まい探しについて考えておく必要がある
高齢になったら賃貸住宅は借りられない?
ここも誤解されやすいところです。
「高齢者になると賃貸住宅を借りられない」と一律に考える必要はありません。
高齢者などは住宅確保要配慮者として、住宅セーフティネット制度の対象となっています。
さらに、2025年10月1日には改正住宅セーフティネット法が施行されました。
改正後は、大家と居住支援法人などが連携し、安否確認や見守りなどを行う「居住サポート住宅」の認定制度も始まっています。
一方で国土交通省は、貸主側に孤独死や残置物処理、家賃滞納などへの懸念があることも制度改正の背景として挙げています。
そのため、
「賃貸なら老後も何も心配ない」
「高齢者になったら賃貸は無理」
のどちらも極端です。
老後も賃貸で暮らす予定なら、早めに選択肢や支援制度を知っておくことが大切です。
5.「家賃はもったいない」は本当?
持ち家と賃貸を考えるとき、よく出てくるのが、
「家賃は払っても何も残らないから、もったいない」
という話です。
確かに、賃貸住宅の家賃を何年払っても、その住宅が自分の所有物になるわけではありません。
ただし、
「だから家賃は全部ムダ」
と考えるのも少し違います。
賃貸では家賃を支払うことで、その住宅に住めます。
さらに、住宅そのものを所有しないため、持ち家と比べて住み替えやすく、固定資産税など所有に伴うコストを直接負担しないという特徴があります。国土交通省もこうした点を賃貸住宅のメリットとして挙げています。
一方、持ち家も購入価格だけを払えば終わりではありません。
住宅ローンを利用すれば利息があります。
購入時には登記費用などの諸費用も必要です。
購入後には固定資産税などの税金、火災保険、修繕費などもかかります。
マンションなら管理費や修繕積立金も必要です。
だから、
家賃10万円
vs
住宅ローン10万円
だけを比べて、
「同じ10万円なら家を買った方が得」
とは判断できません。
毎月の支払額だけでなく、購入時・保有中・将来の売却まで含めて考える必要があります。
6.「持ち家なら最後に資産が残る」も単純ではない
反対に、
「持ち家なら最後に家が残るから絶対に得」
とも限りません。
住宅を購入すれば、自分の資産として所有できます。
将来売却することも可能です。
しかし、
購入価格 = 将来の売却価格
ではありません。
築年数、建物の状態、立地、その地域の住宅需要などによって、将来の価格は変わります。
国土交通省も、持ち家について、売りたいときにすぐ売れるとは限らず、市場価格が下落するリスクがあることを示しています。
つまり、
「持ち家=必ず得する資産」
「賃貸=何も残らないから損」
という二択では考えない方がいいでしょう。
7.持ち家と賃貸を一覧で比較
ここまでの違いをまとめます。
| 比較項目 | 持ち家 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 住み替えやすさ | 売却などが必要になるため、簡単には動きにくい | 契約条件はあるが、比較的住み替えやすい |
| 住宅の自由度 | 比較的高い。ただしマンション等では制限もある | リフォームなどに制限があることが多い |
| 維持管理 | 所有者として修繕・管理が必要 | 必要な建物修繕は原則として貸主側 |
| 老後 | ローン完済後も税・修繕費等は必要 | 住み続ける限り基本的に家賃が必要 |
| 資産性 | 資産として所有できるが、価値は変動する | 住宅そのものを所有することにはならない |
| 住宅ローン | 利用する場合は長期間の返済が必要 | 住宅購入のためのローンは基本的に不要 |
| 災害・環境変化 | 住宅を所有しているため影響を受けやすい | 状況によって住み替える選択肢を取りやすい |
| 家族構成の変化 | 住み替えには手間やコストがかかる | 人数に合わせて広さを変更しやすい |
| 転勤 | 売却・賃貸化・単身赴任などの検討が必要になることも | 転勤に合わせて住み替えやすい |
| 相続 | 資産として相続できるが、管理や手続きも必要 | 住宅そのものを相続することはない |
8.こんな人は持ち家を検討しやすい
たとえば、次のような人です。
長期間、同じ地域に住む可能性が高い人
売却や住み替えを頻繁に考える必要がないため、持ち家を検討しやすくなります。
転勤の可能性が低い人
仕事の都合で住む地域が変わる可能性が低ければ、長期的な住宅計画を立てやすくなります。
自分好みの住宅にしたい人
リフォームや設備変更など、住まいの自由度を重視する人です。
老後まで住める住宅を確保したい人
長期的に同じ住宅で暮らすことを考えている場合です。
住宅ローン以外の費用も準備できる人
毎月の返済額だけではなく、税金や修繕費なども含めた資金計画を立てられることが重要です。
もちろん、これらに当てはまれば「持ち家が正解」という意味ではありません。
持ち家を検討しやすい条件と考えてください。
9.こんな人は賃貸を検討しやすい
反対に、次のような人は賃貸を検討しやすくなります。
転勤や転職の可能性がある人
住む地域が変わる可能性が高いなら、住み替えやすさは大きなメリットです。
家族構成がまだ変わりそうな人
結婚、出産、子どもの独立などで必要な住宅の広さは変わります。
同じ地域に長く住むか分からない人
将来住みたい場所がまだ決まっていない段階なら、無理に住宅を購入しないという考え方もできます。
長期間の住宅ローンを抱えたくない人
住宅を所有することよりも、身軽さを重視する場合です。
住宅の維持管理をできるだけ自分で抱えたくない人
修繕や住宅管理の負担を抑えたい場合です。
その時々に合わせて住む場所や広さを変えたい人
仕事、家族、年齢などに応じて住宅を変えていく考え方です。
こちらも、
「当てはまったから賃貸が正解」
という意味ではありません。
10.結局、自分の場合はどう考える?
ここまで読んでも、
「結局、うちはどっち?」
と思うかもしれません。
そんなときは、住宅価格だけを見る前に、次のことを考えてみてください。
- この地域にあと何年住む予定?
- 転勤や転職の可能性は?
- 今後、家族の人数は変わりそう?
- 子どもが独立したあとも今と同じ広さが必要?
- 毎月の住宅ローンだけでなく、将来の修繕費まで準備できる?
- 長期間の住宅ローンを返済することをどう感じる?
- 住み替えられる自由と、住宅を所有することのどちらを重視する?
- 老後はどこで、どんな家に住みたい?
全部に今すぐ答えを出す必要はありません。
むしろ、
「自分たちは何をまだ決められていないのか」
が分かるだけでも、家選びはかなり整理しやすくなります。
まとめ|「持ち家か賃貸か」より大切なこと
持ち家と賃貸には、それぞれメリットとデメリットがあります。
持ち家には、
所有できる・自由度が高い・ローン完済後は返済がなくなる
という特徴があります。
一方で、
簡単には動きにくい・修繕や税金が必要・資産価値が下がる可能性がある
という面もあります。
賃貸には、
住み替えやすい・住宅ローンを抱えない・住宅そのものの維持管理を所有者として抱えない
という特徴があります。
一方で、
住み続ける限り基本的に家賃が必要・住宅そのものは自分の資産にならない・自由に改修しにくい
という面があります。
だから大切なのは、
「持ち家と賃貸、どちらが一般的に得なのか?」
ではありません。
「自分たちは、これからどんな暮らしをしたいのか?」
です。
仕事、家族、住む場所、老後。
それぞれの将来を考えたうえで、自分たちに合う住まい方を選んでいきましょう。
参考にした一次情報
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」 — 主世帯の持ち家割合、高齢者世帯の居住状況。
- 国土交通省「住宅は資産にもなり得る|住まリテ」 — 持ち家の資産価値、売却・価格下落リスク、賃貸の特徴。
- 国土交通省「住宅セーフティネット制度」 — 高齢者などの住宅確保要配慮者への居住支援。
- 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」 — 2025年10月1日施行の改正内容。
- 法務省「賃貸物の修繕等(民法第606条第1項関係)」 — 賃貸人の修繕義務。



コメント