「2026年9月から残業のルールが変わるらしいよ」
SNSやニュースでそんな話を見かけて、
「残業できる時間が変わるの?」
「自分の会社にも関係ある?」
と気になった方もいるかもしれません。
結論から言うと、「2026年9月から、会社員の残業時間の法律上の上限が全国一律で変わる」という法改正は、現時点では確認できません。
ただし、2026年9月1日から実際に変わるものがあります。
それが、労働基準監督署などによる時間外労働への相談・支援や監督指導の運用です。
さらに、これとは別に、連続勤務の制限や勤務間インターバル、「つながらない権利」など、今後の労働基準法制を見直す議論も進んでいます。
今回は、
- 9月から実際に変わること
- 変わらないこと
- 今後検討されていること
を分けて、わかりやすく整理します。
結論|9月から「残業時間の上限」が一斉に変わるわけではない
まず押さえておきたいのは、
2026年9月から残業時間の法律上の上限そのものが全国一律で変更されるわけではない
という点です。
一方で、厚生労働省は2026年8月19日、9月1日から時間外労働等に関する相談・支援や監督指導の運用を見直すと発表しました。
つまり、
「残業時間の法律が9月から変わる」
ではなく、
「労基署などの指導・支援のやり方が9月から変わる」
と考えるのが正確です。
2026年9月から実際に変わるのは何?
厚生労働省によると、2026年9月1日から、全国の働き方改革推進支援センターや労働基準監督署で、時間外労働に関する対応が見直されます。
これまで労基署では、時間外・休日労働の「時間数」に着目し、月45時間以内への削減を求める一律的な指導が行われることがありました。
今後は、このような一律的な対応を見直し、
36協定で定めた健康・福祉確保措置がきちんと実施されているか
などを重点的に確認し、それぞれの事業場の状況に応じて必要な指導を行う方針になります。
ただし、これは、
「残業してもよくなった」
という意味ではありません。
過重労働による健康障害のおそれが高い場合などには、引き続き必要な指導が行われます。
なぜ「労基法が変わる」と話題になっているの?
今回の話と混同されやすいのが、現在進んでいる労働基準関係法制の見直し議論です。
厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」では、働き方の変化に合わせて労働基準法などを見直すため、さまざまな議論が行われてきました。
その中には、
- 連続勤務の制限
- 勤務間インターバル
- 「つながらない権利」
なども含まれています。
ただし、これらは現時点では、検討・提言段階のものを含みます。
「議論されている」
と
「法律として成立して施行される」
は、まったく別の話です。
検討されている① 連続勤務の制限
研究会報告では、
「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法に設けるべき
という提言が示されています。
現行制度では、休日の配置などによっては長期間の連続勤務が生じる可能性があります。
そのため、2週間以上の連続勤務を防ぐ観点から、新たな規制を検討するべきだという考え方です。
ただし、これは現時点ですでに施行されているルールではありません。
災害復旧など、やむを得ない場合の例外措置についても検討が必要とされています。
検討されている② 勤務間インターバル
「勤務間インターバル」とは、
仕事が終わってから次の仕事が始まるまでに、一定の休息時間を確保する仕組み
です。
たとえば、
夜10時に仕事が終わった
↓
翌朝9時に出勤する
のであれば、勤務と勤務の間は11時間になります。
現在、勤務間インターバル制度の導入は努力義務ですが、研究会では、義務化も視野に入れて制度を強化することが検討されています。
具体的な休息時間については、
11時間を原則とする案
なども議論されています。
ただし、
- 11時間を必ず義務化するのか
- より短い基準にするのか
- 例外や代替措置を認めるのか
- 経過措置を設けるのか
など、制度設計についてはまだ議論が続いています。
したがって、
「9月から11時間の勤務間インターバルが義務化される」
という情報は、現時点では正確ではありません。
検討されている③ 「つながらない権利」
テレワークやスマートフォンの普及によって、
「勤務時間外なのに上司からLINEが来る」
「休日でも仕事のメールを確認してしまう」
という人も増えました。
こうした勤務時間外の仕事とのつながり方について、
労働者が十分に休息できるよう、どのようなルールを設けるべきか
という議論が行われています。
一般に「つながらない権利」と呼ばれる考え方です。
研究会では、
- どのような連絡なら許容されるのか
- どのような連絡には対応しなくてもよいのか
- 労使でどのような社内ルールを作るべきか
といった点が議論されています。
こちらも、現時点で全国一律の法律として施行されているものではありません。
「検討中」と「法改正決定」は全然違う
法律が実際に変わるまでには、いくつかの段階があります。
① 検討
有識者会議や審議会などで、制度の見直しについて議論する段階。
② 法案
政府などが法律の改正案をまとめ、国会へ提出する段階。
③ 成立
国会で法案が可決され、法律として成立する段階。
④ 公布
成立した法律が正式に公表される段階。
⑤ 施行
決められた日から法律が実際に効力を持つ段階。
SNSなどでは、
「検討されている」
という情報が、
「もう法改正が決まった」
という形で広がってしまうことがあります。
とくに、
「○月から変わる!」
という具体的な日付が付いていると、すでに決定事項のように見えてしまいます。
しかし、報告書の公表日や審議の予定日が、そのまま法律の施行日になるわけではありません。
現在の残業時間の上限ルールは?
今回の見直しによって、現在の時間外労働の法律上の上限がなくなるわけではありません。
時間外労働には、現在も法律上の上限規制があります。
原則として、
月45時間・年360時間
です。
臨時的な特別な事情があり、特別条項付き36協定を結んだ場合でも、法律上の上限があります。
今回の9月からの見直しは、
こうした上限そのものを変更するものではなく、労基署などによる相談・支援・監督指導の運用を見直すもの
です。
ここを混同しないことが重要です。
「○月から法改正」と聞いたら何を確認すればいい?
SNSやニュースで、
「来月から法律が変わる!」
という情報を見たら、次の3つを確認してみましょう。
1. いつから「施行」なのか
単なる検討開始日や報告書の公表日ではなく、正式な施行日が決まっているか。
2. 法律として成立しているのか
研究会や審議会で話し合われている段階なのか、それとも国会で成立した法律なのか。
3. 公的な一次情報があるか
厚生労働省やe-Gov、官報など、公的機関が正式に発表している情報なのか。
この3つを見るだけでも、
「本当に決まった法改正なのか?」
を判断しやすくなります。
まとめ
今回のポイントを整理します。
- 2026年9月から残業時間の法律上の上限が全国一律で変わる法改正は、現時点では確認できない
- 2026年9月1日から、労基署などの時間外労働に関する相談・支援・監督指導の運用は実際に変わる
- 連続勤務の制限、勤務間インターバル、「つながらない権利」などは、今後の法制度見直しとして検討されている
- 「検討中」と「法律として成立・施行」は別物
- SNSの法改正情報は、施行日・成立状況・一次情報を確認することが大切
「9月から残業ルールが変わる」
という情報は、完全な間違いとも言い切れません。
ただし正確には、
9月から変わるのは労基署などの指導・支援の運用であり、残業時間の法律上の上限そのものが一斉に変わるわけではない
ということです。
働き方に関わる制度は、自分の生活にも直接関係します。
見出しだけで判断せず、
「何が決まったのか」
「何がまだ検討中なのか」
を分けて理解することが大切です。
仕事、お金、法律。知らないを、学びに変える。
大人の放課後ゼミでは、これからも大人になってから知っておきたい制度やルールを、一次情報を確認しながらわかりやすく解説していきます。
参考情報
- 厚生労働省「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」(2026年8月19日)
- 厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」
- 厚生労働省「労働基準関係法制研究会」議事録
- 労働政策審議会 労働条件分科会の資料・議事録
※本記事は2026年8月25日時点の情報をもとに作成しています。今後、法案提出・成立・施行など状況が変わる可能性があります。最新情報は厚生労働省などの公的機関でご確認ください。



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